もう、15年以上も前の話。シンポジウムでオーストリアのウィーンに10日間ほど行った
ことがあります。なんせドイツ語圏なので結構、困った部分もあったのとウィーンは馬
車が多くて、想像もしてなかったほど馬フンが街中に沢山あって自分にとってはウィー
ンは決して素敵な街には思えなかった記憶があります。それでも何か記憶に残ることを
と思い、コンセルトヘボウでキーシンのピアノコンサートがあると知り、行ったことが
あるのです。キーシンの名前は知っていましたし、ブーニンよりも好きなピアニスト
だったので。
それでピアノ独奏会に行ったのですが、席は満席。かなりの人数の方がコンサートに来
ていました。感想は初めてコンサートホールでピアノを聞いたのですが、凄まじい、の
一言です。ピアノの音が頭の中を駆け巡った感じです。本人のキーシン自身はタキシー
ドを着ていたのですが、もう汗でびっしょりなのがはっきり分かりました。そう、亡く
なった女性ピアニストの中村女史が言っていたそうですが、ピアノ演奏はまさに戦い。
身体を使っての戦い、そのままです。こんな凄いのがピアノ演奏だなんて露知らず。演
奏は確かに素晴らしかったし、テンションが高くなって変に興奮していたように思いま
す。加えてコンサートホールだった、コンセルトヘボウの音響が良かった気がしていま
す。多分そうなのでしょう。
ピアノは中学生とか高校生の頃が何故か、一番好きだったような気がしています。それ
は、どうもチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番変ロ短調と言う曲で映画で聞いて
それでかなりインパクトが自分にあって、頭の中にしばらく響いていた感じです。この
協奏曲の出だしは本当に快感で今聞いても気持ちが良い。そういう曲です。
そんなことでブリティッシュロックが大好きだった当時の自分には今思えば変かもです
がピアノの音が大好きで、そんなわけでキーシンを聴きにいったように思っています。
しかし、汗だらけでタキシードで演奏していたキーシンは自分にとっては英雄でした。
大人になってからも、そんなことは思うんですね。