引用:読売新聞
レアなケースのように思いましたが、観光名所で有名な福島県金山町大塩の「大塩天然
炭酸水井戸」で15日早朝に水を汲みにいった77歳の男性と49歳の女性が井戸の中で浮
かんでいる状態で発見されました。炭酸水と呼ばれていることから分かるように、こ
の井戸では水と一緒に二酸化炭素が産出されています。二酸化炭素は空気など地球の環
境中にごくありふれた物質で 通常空気中では0.03パーセントですので、その有毒性が
問題となることはありません。しかし、空気中の二酸化炭素濃度が高くなり、濃度が
3〜4 % を超えると頭痛・めまい・吐き気などの症状になり、7 % を超えると数分で意
識を失うことになると言われています。この状態が継続すると麻酔作用による呼吸中枢
の抑制のため呼吸が停止し、死に至るとされています。
このことから、今回は非常に残念なことですが、井戸の周囲、あるいは、井戸の中の二
酸化炭素濃度が7%以上になっている状況で井戸の水を汲みにいった方が意識を失い、
御二方とも井戸の落ちたということでしょう。非常に悲しい事故でしたが、ニュースを
読んで再度、二酸化炭素の危険性について再認識すべきと思い、調べてみました。
一酸化炭素と比較すると二酸化炭素による人間の死亡例は少ないですが、実際に死亡事
故が起きているのが事実です。事例としては、自動消火装置の誤作動、火山ガス、そし
てドライアイスの間違った扱いなどで起きています。付け加えて言えば、二酸化炭素に
も毒性があるとも言われています。過去の実験では酸素濃度20%、二酸化炭素濃度80%
の気体を犬に吸わせた実験で、犬は1分で呼吸が停止し数分で死亡したそうです。そ
う、酸素が十分にあっても二酸化炭素の濃度が高いと危険であることということのよう
です。単純に酸欠とも言えない状況もあるとようです。
事故原因の消火装置の誤作動に関しては、単純に言えば間違って密閉された空間で消火
装置のボタンを押してしまうということです。これは理解しやすいですよね。火山ガス
に関しては世界最大の事故は昭和61年8月21日にカメルーンのニオス湖で起きていま
す。湖水の深層水で過飽和になっていた二酸化炭素が浅水層に移動、気泡となって
100%近い二酸化炭素が谷あいの村に流れ込み、住民1746人、家畜8000頭以上が死亡し
た事故です。
非常に恐い事故ですが、日本もカルデラ湖も多いので危険かとも思ってしまいますが、
カメルーンは1年中、気温の変化のない地域で、湖の水が気温変化による対流も起こさ
ないので二酸化炭素も全く動かず、そのままそこに滞留するんだそうです。日本は季節
変動で湖の水温も変化し、対流するのでガスが溜まることはないのだそうです。
二酸化炭素は空気と比較すると比重が1.56倍なので確かに下に沈みますが、通常解放空
間では空気の対流もありますし、風があるので貯まりません。今回の件は非常に状況が
悪く、その場所に溜まったということでしょう。二酸化炭素の場合は匂いももちろん、
色もないのでまったく、その存在に気付きません。日本での火山ガスでの死亡事故では
青森県青森市の八甲田山北東に位置する八甲田温泉および田代平高原付近にて1997
年7月12日に自衛隊員が訓練中に窪地 に落ちて中毒死してしまった例があります。
この場所では、二酸 化炭素が放出されている窪地があり、翌日、現地のガス成分を調べ
た結果によると、窪地でのCO2濃度は15~20%だったそうです。この場合はレンジャ
ー部隊の訓練中と言うことで死亡が3名、休業者が17名と非常に大きな事故でした。
このように思った以上に高濃度の二酸化炭素による死亡事故は多く、もしもそのような
場所に行く場合は避けるか等の判断も必要と思います。今回の場合は写真で見た感じで
は大気解放された場所でしたので、本当に悪い条件が重なったことが想像されます。
亡くなった方のご冥福をお祈りすると共に、自分の行動でも気を付けることを心に誓い
ました。